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お知らせ
書評:『被爆者からあなたに――いま伝えたいこと』(岩波ブックレットNO.1048)
2021.08.03
日本原水爆被害者団体協議会編(定価:本体620円+税)

すぐに読んでほしい!小冊子

 原爆の事、被爆者の事、一通り知識を持っていても、日常的に何をしたらいいのかわからず流されていく人は多い。私もその一人であった。被爆者の辛い、長い闘いの歴史を知るには努力が要った。このブックレットは、それらの悩みにこたえてくれる。コンパクトで、わかりやすく、かつ、正確に、被爆の実相と、被爆者の闘いを記している。そしてそれはあなた(読者)と無関係ではないことを知らせている。手軽にとって手軽に読んで、周りの人たちに気軽に伝えてほしい。

 広島・長崎に原爆投下されてより76年になろうとしている。国から見捨てられてきた生存被爆者たちは11年後「日本被団協」を結成し、国家責任と国による償い、「核兵器廃絶」へと収斂してゆく闘いを開始した。多岐にわたる支援者は絶えずあり歓迎されたが、構成員は被爆者限定という稀有な組織であった。先陣を切った被爆者の多くはなくなり、現在は幼児期や胎内被爆世代が中心となっているが、この構成と闘争目標は変わっていない。核兵器禁止条約は発効したが、わが国は批准さえしていない。今も核戦争の危機は去っていない。実戦使用されなかったのは、病を引きずりながら、世界各国に出かけ、原爆の地獄を伝え、廃絶を訴えたヒバクシャたちに負うとこが大きい。このブックレットはヒバクシャがこれからを生きる人たちに託す最後のメセージともいえる。

中澤正夫
(NPO法人 ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会 代表理事・精神科医)

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