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【東京】12/15(土)ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会設立6周年記念 「被爆者の声を未来につなぐ公開ミーティング」開催報告
2019.01.15

12月15日(土)午後、武蔵大学(東京都練馬区)にて『被爆者の声を未来につなぐ公開ミーティング~「ノーモア・ヒバクシャ継承センター」の設立をめざして~』を開催しました。

ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会が発足して6年、これまで収集してきた資料と、それらを活用した「継承」の活動のようすを紹介し、継承活動の広がりと可能性を感じていただくとともに、そうした活動の基盤となる資料の収集・保管・整理・公開を行う「継承センター」の設立を呼びかけることが目的でした。「公開ミーティング」と銘打ったのは、参加型の企画とすることで、来場した皆さんからも私たちの会に提案やアイデアをいただきたい、そのように関わる場面と人を増やしていくことがこの運動を広げていく力になるのでは、という思いからでした。当日は、当会会員・日本被団協・一般市民・学生など約70人が参加、報道関係は6社から取材がありました。

オープニングとして武蔵大学の学生有志が制作した「声が世界を動かした」を上映。永田浩三先生(武蔵大学社会学部)が指導された映像作品で、当会の資料室の様子や岩佐代表理事のインタビューも交えながら被爆者運動の歴史を紹介するものでした。撮影・編集・ナレーションなど全て学生の手によるものですが、歴史的なできごとと被爆者たちの思いがしっかりと表現されており、この後開会挨拶に登壇された田中煕巳さん(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)が、「これから被爆者運動の歴史を紹介するときには、この作品を使えばよいと思いました」と述べられたほどの出来映えでした。

武蔵大学の学生有志制作の「声が世界を動かした」を上映
挨拶する田中煕巳日本原水爆被害者団体協議会代表委員

この後は、「全体会」として4つの「継承活動」を紹介しました。

ひとつめは、「未来につなぐ被爆の記憶プロジェクト」の様子を岡山史興理事が紹介。インターネット上の地図システムを使って被爆者の証言や写真を表現していくもので、広島・長崎だけでなく、身近なところに被爆者の体験への入り口があることを示すことができます。9月に行った体験会の様子を交えながら、当会収集の被爆証言集や地域での被爆体験の聞きとりをこの地図システムに表現していくこと、それを多くの市民の参加で広げていきたいというプロジェクトの趣旨を報告しました。

「未来につなぐ被爆の記憶プロジェクト」を紹介する岡山史興理事

二つ目は、昭和女子大学の学生による「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」からの発表。このプロジェクトでは、松田忍先生(昭和女子大学人間文化学部歴史文化学科)の指導のもと、当会収集の史料の読み込みやご本人へ聞き取りなどを行い、被爆者運動の歴史を研究しています。学生たちは研究を進める中で、被爆者一人一人の体験と内面の変化を追い、「その人ごとに被爆者に『なる』契機があったのではないか」ということに気づいていきます。これまでの研究の成果は2018年11月の学園祭で発表(【東京】11/10~11 “被爆者に「なる」”をテーマに 昭和女子大学PJが秋桜祭で展示を参照)、最終的には2021年に学内博物館で企画展示を行うことを目指して研究を続けています。

昭和女子大学の学生による「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」からの発表

三つ目は、当会の活動の一つである「継承する人をつなぐプロジェクト」。ボランティアスタッフの中尾詩織さんから、各地の継承活動の様子の紹介、継承活動に取り組む人々をつなぐことでさらに多くの方へと発信していく機会にしたい、という活動の趣旨を紹介しました。中尾さんご自身も、国立市が主催する「原爆体験伝承者育成プロジェクト」の講座受講生とのこと。「顏が見える規模での語りの場を大切にしていきたい」という思いと、様々な継承の形があることの大切さを語りました。

継承する会の「継承活動に取り組む人々をつなぐPJ」「被爆者のお話と茶話会」などでボランティア・スタッフをしていただいている中尾詩織さんの報告

四つ目は、「奈良県内の原爆被害者の声を未来に~手探りの掘り起こしから継承へ」と題して、奈良県在住の入谷方直さんからの発表。奈良県は、全国で一番初めに被爆者団体が解散してしまった地域だそうです・・・そのことにより、被爆者団体が発行した手記集は絶版となり、かつその手記集は県内の限られた図書館にしか収蔵されていないことを知った入谷さんは、「失われゆく歴史の資料を後世につなぎたい」と活動を始めました。様々な苦労を重ねる中、奈良県生協連・ならコープとの出会いがあり、支援を受けながら手記集の復刻をめざし、また収集資料を保管・展示する資料室をならコープ施設内に設けることができたそうです(8月公開をめざし準備中)。一度失われてしまったものを復刻させることの困難さ、他にはない被爆者の体験や被爆者運動の資料を収集・保管することの大切さを感じる報告でした。

「奈良県内の原爆被害者の声を未来に~手探りの掘り起こしから継承へ」、入谷方直さんからの発表

後半は、参加者全員が4つのグループに分かれ、4つの報告の発表者を囲んでのディスカッションを行いました。グループごとに、それぞれの活動の意味・取り組んでいる人たちが大切にしていること・こうした取り組みを広げていくために必要なこと、を話し合いました。各グループの進行は、東京都生協連と日本生協連の職員が担当しました。途中で時間を区切るのが心苦しいほど、グループでのディスカッションが盛り上がっていたのですが・・・時間の制約もあり、約1時間のグループディスカッションとなりました。

最後に全体会として、改めて参加者全員が集合し、各グループからのメッセージの発表、そして濱住治郎さん(日本原水爆被害者団体協議会事務局次長、ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会事務局)から、「ノーモア・ヒバクシャ継承センター」の設立に向けた募金の呼びかけを行いました。(呼びかけ全文はこちら

濱住治郎さん(日本原水爆被害者団体協議会事務局次長、ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会事務局)の「ノーモア・ヒバクシャ継承センター」の設立に向けた募金の呼びかけ

オープニングの映像上映と4つの報告の発表者は、いずれも10代~40代と比較的若い世代でした。若い世代の方々が、被爆者の体験や被爆者運動の歴史に出会うなかで、自分たちなりの発見をしていく様子、被爆者の体験や被爆者運動の歴史的な資料などを後世に引き継ぐために、それぞれの得意なこと、大切だと思う方法をとりながら活動をされている様子に、とても刺激を受けました。「継承」というのは、単に事実をそのまま伝えるだけではなく、そこに新しい意味が加えられていくことなのではないか、そうであれば、「継承」ということはとても創造的なことだ、と感じました。

そして、そうした様々な活動の基礎として、「資料」がとても重要になってくる、ということも改めて感じたところです。会場には、これまでに当会で収集した資料の一部を展示するコーナーも設けました。そうした生の資料を手に取り学ぶこと、そこから新たに生まれる意味。それを歴史の「遺産」として後世に引き継いでいくことの大切さ。その基礎となる各種資料の収集・整理・保管の重要性。「継承センター」の設立に向けて、今後もこのように「継承」の意味を深め、その基礎となる資料収集の重要性を理解いただけるような機会をつくっていくことが大切であると考えています。

今回の企画は、武蔵大学・永田浩三先生のご協力により、設備の整った大教室を2つもお借りして開催することができました。深く御礼申し上げます。

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